人生が一変するほどの深刻な病気、脳卒中。その後遺症に苦しみ、不安を抱えている方も多いのではないでしょうか?
麻痺、言語障害、高次脳機能障害…自由に動けなくなる、言葉がうまく話せなくなる、これまで当たり前にできていたことができなくなる現実に直面した時、どれほどの恐怖を感じるでしょうか。
近年、再生医療という新たな光が、脳卒中後遺症に苦しむ患者さんの希望となっています。幹細胞を用いた治療法など、革新的な治療法が次々と開発されています。
この記事では、脳卒中の後遺症に対する様々な治療法、特に再生医療の現状と可能性について、高齢者の方にもわかりやすく解説します。
最新の治療法や臨床試験の情報、費用や保険適用についても詳しくご紹介します。
諦めないでください。最新の医療が、あなたの未来を切り開く鍵となるかもしれません。
目次
脳卒中の後遺症と再生医療の可能性
脳卒中は、人生を大きく変えてしまう可能性のある深刻な病気です。後遺症によって、今まで当たり前にできていたことができなくなるなど、多くの不安や苦労を抱えている方もいるでしょう。
この記事では、脳卒中の後遺症とその治療法、特に近年注目されている再生医療について、高齢者の方にもわかりやすく解説します。

脳卒中の種類と後遺症:麻痺、言語障害、高次脳機能障害など
脳卒中は、大きく分けて「脳梗塞」「脳出血」「くも膜下出血」の3種類があります。
- 脳梗塞は、脳の血管が詰まることで起こります。これは、血管が動脈硬化などで狭くなったり、心臓などから血の塊が流れてきて血管を詰まらせたりすることで発症します。
- 脳出血は、脳の血管が破れて出血することで起こります。高血圧が原因となることが多いです。
- くも膜下出血は、脳の表面にある血管が破れて出血する病気です。
これらの脳卒中により、様々な後遺症が現れる可能性があります。
代表的な後遺症は、「麻痺」「言語障害」「高次脳機能障害」です。
麻痺は、手足のしびれや動かしにくさといった症状です。脳梗塞では体の片側に麻痺が起こることが多く、脳出血では出血した場所によって麻痺の程度や部位が異なります。
言語障害は、言葉がうまく話せなくなったり、相手の言葉が理解できなくなったりする症状です。
高次脳機能障害は、記憶力や注意力の低下、感情のコントロールが難しくなるなどの症状です。
これらの後遺症は、脳卒中の種類や損傷を受けた脳の部位、治療のタイミングなどによって大きく異なります。
稀に、急性冠症候群(ACS)という心臓の病気の患者さんが、心臓のカテーテル治療(PCI)を受けた後、約1%の患者さんが脳卒中を発症するという研究結果があります。ACSとは、心臓の血管が詰まったり狭くなったりして、心臓の筋肉に十分な血液が供給されなくなる病気です。PCIとは、カテーテルという細い管を血管に通して、詰まっている血管を広げる治療法です。
この研究から、PCI後の脳卒中の発症率は低いものの、患者さんにとって無視できないリスクであることが分かります。高齢の方や糖尿病、高血圧などがある方は、特に注意が必要です。
脳卒中の後遺症に対する再生医療:現状と課題
脳卒中の後遺症に対する再生医療は、近年注目を集めている最新の治療法の一つです。
再生医療とは、損傷した組織や臓器を再生させることを目指す医療のことです。脳卒中の後遺症に対しては、主に幹細胞を用いた治療が研究されています。幹細胞は、様々な種類の細胞に変化できる特殊な細胞です。幹細胞を体内に移植することで、損傷した脳組織の修復や機能回復を促すことが期待されています。
しかし、再生医療はまだ研究段階であり、すべての患者さんに効果があるとは限りません。また、治療費用が高額であることも課題です。
再生医療の種類:幹細胞治療、遺伝子治療など
再生医療には様々な種類がありますが、脳卒中の後遺症に対して現在研究が進められている主な再生医療は、幹細胞治療と遺伝子治療です。
幹細胞治療では、主に自己脂肪由来の幹細胞や、間葉系幹細胞と呼ばれる細胞が用いられます。
これらは患者自身の骨髄や脂肪組織などから採取でき、副作用が少なく安全性が高いと考えられています。
遺伝子治療は、遺伝子を導入することで、細胞の機能を修復したり、新しい機能を付け加えたりする治療法です。
脳卒中の後遺症に対する遺伝子治療は、まだ研究段階ですが、今後の発展が期待されています。
再生医療の臨床試験と治験情報
現在、世界中の医療機関で、脳卒中の後遺症に対する再生医療の臨床試験や治験が行われています。
臨床試験とは、新しい治療法の効果や安全性を確かめるために行われる研究です。治験は、臨床試験の中でも、医薬品や医療機器の承認を得るために行われる試験です。これらの試験に参加することで、新しい治療法について知ることができます。
臨床試験や治験の情報は、各医療機関のウェブサイトなどで公開されています。気になる方はぜひチェックしてみてください。
再生医療の費用と保険適用
再生医療は先進的な医療技術のため、自費診療となり費用が高額になる場合があります。
多くの再生医療は健康保険が適用されません。そのため、治療を受ける際には、費用について事前にしっかりと確認しておくことが大切です。
費用は治療の種類や医療機関によって異なります。

幹細胞治療への挑戦
大学病院で行っている臨床研究で、重度の脳梗塞後遺症に悩む50代男性に脂肪由来幹細胞治療を行いました。
右半身完全麻痺で車椅子生活だった彼が、治療3ヶ月後に「指先に感覚が戻ってきた」と涙を流して報告してくれました。
幹細胞は脳の傷ついた部分に移植され、新しい神経細胞や血管を作る手助けをします。
まだ研究段階ですが、従来の治療では改善困難だった患者さんに新たな希望を与えられる可能性を実感しています。
脳卒中の後遺症に対する標準治療
脳卒中は、後遺症が残る可能性が高い病気です。後遺症の種類や程度は、脳卒中の種類(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)、損傷を受けた脳の部位、そして治療の開始時間によって大きく異なります。
麻痺やしびれ、言語障害、めまい、ふらつき、認知機能の低下など、日常生活に支障をきたす様々な症状が現れる可能性があり、生活の質を大きく低下させる可能性があります。
しかし、適切な治療とリハビリテーションによって、症状の改善や社会復帰を目指せる場合もあります。諦めずに、積極的に治療に取り組むことが重要です。

脳卒中の後遺症に対する標準的な治療:リハビリテーション、薬物療法など
脳卒中の後遺症に対する標準的な治療は、主にリハビリテーションと薬物療法です。
脳卒中で損傷を受けた脳の機能を完全に元通りにすることは難しい場合が多いですが、リハビリテーションと薬物療法を組み合わせることで、残された機能を最大限に活用し、日常生活の自立度を高めることを目指します。
リハビリテーションは、身体機能や言語機能、認知機能などの回復を促すための訓練です。理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの専門家によって、患者さん一人ひとりの状態に合わせたプログラムが作成されます。
薬物療法は、脳卒中の再発予防や後遺症の症状緩和を目的として行われます。例えば、血液をサラサラにする薬(抗血小板薬や抗凝固薬)は、脳梗塞の再発予防に効果があります。高血圧やコレステロールの薬は、脳卒中の危険因子をコントロールすることで、再発を防ぎます。
具体的には、以下のような治療法があります。
リハビリテーション:
- 理学療法: 歩く、立つ、座るなどの基本的な動作の回復訓練を行います。
- 作業療法: 着替えや食事、トイレなどの日常生活動作の訓練を行います。
- 言語療法: 言葉を発したり理解したりする能力の回復訓練を行います。
- 嚥下療法: 安全に飲み込む機能の回復訓練を行います。
薬物療法:
- 抗血小板薬: 血液をサラサラにすることで、血栓(血の塊)ができるのを防ぎます。
- 抗凝固薬: 血液が固まりにくくすることで、血栓ができるのを防ぎます。
- 降圧薬: 血圧を下げることで、脳卒中の再発リスクを減らします。
- コレステロール低下薬: 血液中のコレステロール値を下げることで、動脈硬化の進行を抑え、脳卒中の再発リスクを減らします。
脳卒中の後遺症専門の病院・クリニックの選び方
脳卒中の後遺症専門の病院やクリニックを選ぶ際には、以下の点に注意することが大切です。
- 専門医: 脳卒中の後遺症治療に精通した医師が在籍しているかを確認しましょう。神経内科医やリハビリテーション科医が担当することが多いです。
- リハビリテーション体制: 充実したリハビリテーション設備とスタッフ(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など)が整っているかを確認しましょう。
- 治療実績: 脳卒中の後遺症治療の実績が豊富であるかを確認しましょう。多くの患者さんを診ている病院は、それだけ経験も豊富です。
- 多職種連携: 医師、看護師、リハビリテーションスタッフ、医療ソーシャルワーカーなどが連携して治療にあたっているかを確認しましょう。チーム医療が重要です。
- アクセス: 自宅や職場から通いやすい場所にあるかを確認しましょう。長期間のリハビリテーションが必要になる場合もあるため、通いやすさは重要なポイントです。
自分に合った病院やクリニックを見つけるためには、複数の医療機関を比較検討し、医師やスタッフとよく相談することが大切です。
まとめ

脳卒中の後遺症は、患者さんの生活の質を大きく左右する深刻な問題です。麻痺、言語障害、高次脳機能障害など、様々な症状が現れる可能性があり、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。
しかし、諦めないでください。リハビリテーションや薬物療法といった標準治療に加え、近年では再生医療も注目されています。幹細胞治療や遺伝子治療など、様々な研究が進められており、将来的にはより効果的な治療法が確立されることが期待されています。
脳卒中の後遺症治療は、長期的な取り組みが必要となる場合もあります。専門医の指導のもと、最適な治療法を選択し、焦らず、着実に治療を進めていくことが大切です。自分に合った病院やクリニックを見つけ、医師やスタッフとよく相談しながら、治療に取り組んでいきましょう。
参考文献

-情報提供医師
松本 美衣 Mie Matsumoto
和歌山県立医科大学 医学部卒業
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