片側の手足に力が入らない!脳卒中片麻痺の症状と見逃してはいけない危険サインとは?

脳卒中 片麻痺
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体の半分がしびれたり、動かなかったり、ろれつが回らなかったり…突然襲ってくる異変。

それは、脳卒中のサインかもしれません。日本では年間約15万人が片麻痺の後遺症を抱え、日常生活に大きな支障をきたしているという現実があります。

片麻痺は、脳卒中の代表的な症状の一つです。脳の血管が詰まったり破れたりすることで、体に酸素や栄養が行き渡らなくなり、体の片側に力が入らなくなったり、動かしにくくなったりするのです。

この記事では、脳卒中片麻痺の症状や原因、緊急時の対応から、発症後の治療、そして再発予防まで、詳しく解説します。

もしかしたら、あなたの大切な人を守るための知識になるかもしれません。ぜひ、最後まで読んで、脳卒中から身を守る術を手に入れてください。

脳卒中片麻痺の症状と原因、その他の危険サイン

脳卒中片麻痺の5つの症状と原因
脳卒中片麻痺の5つの症状と原因

片側の手足に力が入らない、動かしにくい…こうした異変は、脳卒中のサインかもしれません。

脳卒中は、脳の血管が詰まったり破れたりすることで、脳に酸素や栄養が行き渡らなくなり、様々な症状を引き起こす緊急性の高い病気です。特に、体の片側に麻痺が生じる「片麻痺」は、脳卒中の代表的な症状の一つです。

この記事では、脳卒中の片麻痺の代表的な症状と原因、その他の見逃してはいけない症状のサイン、発症のメカニズムについて、高齢者の方にもわかりやすく解説します。

ご自身やご家族の健康を守るためにも、ぜひ最後までお読みください。

片麻痺とは?左右どちらかの手足に力が入らない、動かしにくい

片麻痺とは、体の左右どちらかの手足に力が入りにくくなったり、動かしにくくなったりする症状です。脳は、右半分が体の左半分を、左半分が体の右半分をコントロールしています。そのため、脳の右半分が損傷すると左半身に、脳の左半分が損傷すると右半身に麻痺が起こります。

麻痺の程度は、損傷の範囲や場所によって大きく異なります。軽く動かしにくい程度の場合もあれば、全く動かせなくなる場合もあります。また、発症直後は筋肉が弛緩して力が入らない「弛緩性麻痺」の状態ですが、その後、筋肉が硬直し、関節が動きにくくなる「痙性麻痺」に移行することがあります。

顔の麻痺:口角が下がる、うまく話せない

脳卒中では、顔の筋肉を動かす神経が損傷し、顔の麻痺が起こることがあります。片側の口角が下がったり、うまく話せなくなったりするのが特徴です。

笑ったり話したりしようとすると、麻痺している側の顔が動きにくいため、左右の表情が非対称になります。まるで、顔の半分が仮面をかぶっているように見えることもあります。

感覚障害:触られても感じない、温度感覚が鈍い

脳卒中によって、皮膚の感覚を伝える神経が損傷すると、感覚障害が起こります。触られても感じなかったり、温度感覚が鈍くなったりします。例えば、熱いお茶をこぼしても熱さを感じにくいため、やけどをする危険性があります。また、麻痺している側の体の位置がわからなくなることもあります。

さらに、脳の視床という部分が損傷すると、視床痛と呼ばれる、非常に辛い痛みが生じることがあります。これは、実際には何もしていないのに、焼けるような痛みや電気が走るような痛みを感じるものです。

めまい、ふらつき:平衡感覚が失われる

めまいは、平衡感覚が失われることで、周囲がぐるぐる回っているように感じたり、体がふらついたりする症状です。脳卒中によって、平衡感覚をつかさどる小脳や脳幹が損傷すると、立ったり歩いたりすることが難しくなり、転倒の危険性が高まります。まるで、船酔いしているかのように感じることもあります。

言語障害:言葉が出てこない、相手の話が理解できない

脳卒中によって、言語をつかさどる脳の領域が損傷すると、言語障害が起こることがあります。これは「失語症」とも呼ばれ、言葉が出てこなくなったり、相手の話が理解できなくなったりする症状です。

症状は患者さんによって様々で、全く言葉が出てこない場合もあれば、特定の言葉が出てこない場合もあります。

また、言葉は理解できるのにうまく話せない「構音障害」が起こる場合もあります。

脳卒中によって片麻痺が起きるメカニズム

脳卒中は、大きく分けて「脳梗塞」と「脳出血」の2種類に分けられます。脳梗塞は脳の血管が詰まることで、脳出血は脳の血管が破れることで起こります。どちらも脳への血流が途絶え、酸素や栄養が脳に届かなくなり、脳細胞が損傷することで様々な症状が現れます。

片麻痺は、脳卒中によって運動をつかさどる脳の領域が損傷することで起こります。特に、椎骨脳底動脈と呼ばれる血管は、小脳、延髄、中脳、後頭葉皮質といった脳の重要な部位に血液を供給しています。これらの部位への血流が阻害されると、重度の障害や死亡につながる可能性があり、片麻痺もその症状の一つです。

また、片麻痺の症状は、「片麻痺性片頭痛」という、片頭痛の一種でも現れることがあります。これは、片側の運動弱化がオーラとして現れるタイプの片頭痛で、脳卒中とは異なる病気です。しかし、症状が似ているため、鑑別が難しい場合があります。

松本美衣
松本美衣

片麻痺の気づきの瞬間
朝の回診で、昨夜入院した脳梗塞の60代男性患者さんに「おはようございます」と声をかけると、左手だけで手を振って挨拶されました。「右手はどうされましたか?」と尋ねると、「あれ、動かない」と初めて気づかれたのです。
脳卒中による片麻痺は、患者さん自身が気づかないことがあり、これを「病識の欠如」と呼びます。
特に右脳梗塞による左麻痺では、麻痺した手足を「自分のものではない」と感じることもあります。患者さんの驚きと困惑の表情を見て、片麻痺という症状の複雑さを改めて実感することがあります。

脳卒中片麻痺の緊急時の対応と予防・治療法

脳卒中片麻痺の緊急時の対応と予防・治療法
脳卒中片麻痺の緊急時の対応と予防・治療法

片麻痺は、脳卒中によって引き起こされる代表的な後遺症の一つです。手足の麻痺だけでなく、顔の麻痺や言葉の障害、感覚の障害など、日常生活に大きな影響を与える様々な症状が現れる可能性があります。

脳卒中は一刻を争う病気です。迅速な対応が重要になります。

この章では、脳卒中片麻痺の緊急時の対応、そして発症後の治療法と再発を防ぐ方法について詳しく解説します。

脳卒中片麻痺を疑う症状が出たら、すぐに救急車を呼ぶ

脳卒中の症状は突然現れ、症状が進むのも速いため、早期発見と迅速な対応が非常に重要です。

「体の半分がしびれる、動かない」「ろれつが回らない」「言葉が出てこない」「激しい頭痛」「めまい」「ふらつき」など、これらの症状が一つでも見られた場合は、脳卒中のサインかもしれません。

少しでもおかしいと感じたら、ためらわずに救急車を呼びましょう。救急車を待つ間は、患者さんを安全な場所に寝かせ、衣類を緩めて楽な姿勢を保ちましょう。吐き気がある場合は、吐瀉物が気道を塞がないよう、顔を横に向けて様子を見ましょう。

サソリに刺された後に、手足の麻痺やろれつが回らないといった脳卒中様の症状が現れるという海外での報告もあります。国内ではあまり馴染みのない事例ですが、このようなケースも念頭に置いておくと良いでしょう。

脳卒中の種類に応じた治療法(tPA療法、血栓回収療法など)

脳卒中には、大きく分けて血管が詰まる「脳梗塞」と血管が破れる「脳出血」の2種類があります。治療法は、この種類によって異なります。

脳梗塞の場合、発症から4.5時間以内であればtPA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)という薬を使って血栓を溶かす「tPA療法」を行うことができます。tPA療法は、発症早期に血栓を溶解することで、脳への血流を再開させ、脳のダメージを最小限に抑えることを目的とした治療法です。

また、発症から24時間以内であれば、カテーテルを使って血栓を取り除く「血栓回収療法」が有効な場合があります。血栓回収療法は、カテーテルという細い管を血管に通し、血栓を直接除去する治療法です。

脳出血の場合は、血腫(血管から漏れ出た血液の塊)の状態によって、薬物療法や手術が行われます。薬物療法は、脳の腫れを抑えたり、血圧をコントロールしたりする薬を使用します。手術は、血腫が大きく、脳への圧迫が強い場合に、血腫を取り除くために行われます。

リハビリテーション:理学療法、作業療法、言語療法

脳卒中後のリハビリテーションは、後遺症の改善と日常生活の自立を支援するために大変重要です。リハビリテーションには、「理学療法」「作業療法」「言語療法」などがあり、それぞれの専門家が患者さんの状態に合わせてプログラムを作成します。

理学療法では、麻痺した手足の筋力トレーニングや歩行訓練などを行います。作業療法では、食事や着替え、トイレなどの日常生活動作の練習を行います。言語療法は、言葉が出にくい、理解しにくいなどの言語障害に対する訓練を行います。

リハビリテーションは早期から開始することが効果的であり、継続的に取り組むことが大切です。

近年の研究では、足先が持ち上がらない「足先下垂」症状を持つ脳卒中患者さんに対する機能的電気刺激が、歩行能力の改善に効果があることが示されています。機能的電気刺激とは、電気刺激によって麻痺した筋肉を収縮させ、機能を回復させる治療法です。

再発予防:生活習慣の改善、服薬管理

脳卒中は再発のリスクが高い病気です。再発を防ぐためには、生活習慣の改善と服薬管理が重要になります。

高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病は脳卒中の大きなリスク要因となるため、適切な治療と管理が必要です。禁煙、お酒を飲みすぎない、バランスの良い食事、適度な運動なども効果的です。

また、医師から処方された薬は、指示通りにきちんと服用することが大切です。

家庭でできる片麻痺へのケアとサポート

脳卒中片麻痺の患者さんを家庭で支えるためには、日常生活での工夫や適切なケアが必要です。

麻痺した手足のストレッチやマッサージ、関節の可動域訓練などを、無理のない範囲で行うようにしましょう。また、安全な住環境を整えることも大切です。段差をなくしたり、手すりを設置したりすることで転倒のリスクを減らすことができます。

介護をする方の知識を高めることも重要です。脳卒中の症状や治療法、後遺症への対処法などを学ぶことで、より効果的なケアを提供することができます。

脳卒中を経験された方の介護者を対象とした研究では、教育レベルの高い介護者は薬物療法や治療法に関する知識が豊富であることが示されています。家族が協力して患者さんを支え、生活の質を維持・向上していくことが重要です。

まとめ

脳卒中 片麻痺

片側の手足に力が入らない、動かしにくい、といった症状は脳卒中のサインかもしれません。

顔の麻痺、感覚障害、めまい、言語障害なども併せて現れることがあります。脳卒中は命に関わることもある緊急性の高い病気です。少しでも異変を感じたら、すぐに救急車を呼びましょう。

治療法は脳梗塞か脳出血かによって異なり、tPA療法や血栓回収療法などが行われます。後遺症の改善にはリハビリテーションが重要で、理学療法、作業療法、言語療法などがあります。

また、再発予防として生活習慣の改善や服薬管理も大切です。家族のサポートも重要なので、脳卒中の知識を深め、協力して患者さんの生活の質を高めていきましょう。

参考文献

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