脳卒中の再発予防は血圧管理が鍵!すぐできる生活習慣改善法【専門医監修】

脳卒中 再発予防
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「もう二度と脳卒中はごめんだ」――その切実な思い、多くの患者さんが抱えているのではないでしょうか?

実際、脳卒中は再発率の高い病気で、一度経験するとその恐怖は計り知れません。2023年の研究では、4万人以上の患者さんを対象にした分析で、血圧管理の重要性が改めて示されました。

この記事では、脳卒中の再発を効果的に防ぐための血圧管理のポイントと、すぐに始められる生活習慣改善策を専門医監修のもと詳しく解説します。

再発の不安を解消し、安心して毎日を過ごせるよう、具体的な方法を一緒に見ていきましょう。

脳卒中再発を防ぐための血圧管理の重要性

脳卒中は、再発のリスクが高い病気です。一度経験された方は、「もう二度とあんな思いはしたくない」「家族に心配をかけたくない」と強く思われていることでしょう。その思い、私も医師として深く共感します。

脳卒中の再発を防ぐためには、日々の血圧管理が何よりも大切です。血圧が高い状態が続くと血管に大きな負担がかかり、再び脳卒中を起こす危険性が高まります。

脳卒中再発を防ぐための血圧管理の重要性について考えていきましょう。

脳卒中再発を防ぐための血圧管理の重要性
脳卒中再発を防ぐための血圧管理の重要性

血圧と脳卒中の関係:高血圧はなぜ危険なのか?

血圧が高い状態が続くと、血管の内側である内皮細胞が傷つき、動脈硬化が進行します。動脈硬化とは、血管が硬く、もろくなってしまう状態です。健康な血管は弾力性があり、スムーズに血液を送り出すことができますが、動脈硬化が進むと血管が硬くなり、血液の流れが悪くなります。

これは、水道管に例えると分かりやすいでしょう。新しい水道管は柔軟で水の流れもスムーズですが、古くなってサビついた水道管は硬くなり、水の流れが悪くなってしまいます。血管も同じように、動脈硬化によって硬くなった血管は血液が流れにくくなり、血管が詰まりやすくなってしまいます。これが脳梗塞(血管が詰まるタイプの脳卒中)の主な原因です。

また、高血圧は血管を破れやすくもします。風船を想像してみてください。空気を入れてパンパンに膨らませた風船は、少しの刺激でも破裂しやすいですよね。血管も同様に、高血圧によって常に圧力が高い状態が続くと、血管壁が薄くなり、破裂しやすくなります。これが脳出血(血管が破れるタイプの脳卒中)や、くも膜下出血(脳の表面の血管が破れるタイプの脳卒中)の危険性につながるのです。

高血圧は、脳卒中の様々なタイプのリスクを高める大きな原因であることが、2023年に発表されたメタ分析とメタ回帰分析からも示唆されています。この研究では、脳卒中や一過性脳虚血発作(TIA)の患者さん4万人以上を対象に、血圧降下量と再発脳卒中の関連性を調べた結果、より強い血圧降下治療を受けたグループは、弱い治療を受けたグループに比べて、再発脳卒中のリスクが減少したと報告されています。

脳卒中再発のサインを見逃さないために

脳卒中の再発のサインは、最初の発作時と同じように現れるとは限りません。最初の発作では右半身に麻痺が出た方が、再発時には左半身に麻痺が出たり、言葉が出にくくなるといった症状が現れることもあります。そのため、どんな小さな変化も見逃さないことが非常に重要です。

代表的なサインとして、「FAST」があります。

  • 「F」顔(Face)
  • 「A」腕(Arm)
  • 「S」言葉(Speech)
  • 「T」時間(Time)

「F」は顔(Face)の片側が垂れ下がる、「A」は腕(Arm)の片方に力が入らない、「S」は言葉(Speech)がうまく話せない、「T」は時間(Timeで、これらの症状が出たらすぐに救急車を呼ぶ、という意味です。

その他にも、急な激しい頭痛、めまい、ふらつき、ろれつが回らない、激しい嘔吐なども、脳卒中のサインの可能性があります。いつもと違う、少しでも異変を感じたら、すぐに医療機関を受診してください。早期発見・早期治療が、後遺症を最小限に抑える鍵となります。

目標血圧値とその設定方法

脳卒中の再発予防において、血圧を適切な値にコントロールすることは非常に重要です。

一般的には、140/90mmHg未満を目標とするケースが多いですが、年齢や他の病気の有無、脳卒中の種類などによって、目標値は一人ひとり異なります。

  • 75歳未満の方であれば、収縮期血圧130mmHg未満、拡張期血圧80mmHg未満
  • 75歳以上の方であれば、収縮期血圧140mmHg未満、拡張期血圧90mmHg未満

を目標値とすることもあります。

医師は、患者さんの状態を総合的に判断し、最適な目標血圧値を設定しますので、ご自身の目標血圧値については、必ず医師に確認するようにしてください。

家庭血圧測定のコツと注意点

家庭血圧測定は、ご自身の血圧の状態を把握し、適切な血圧管理を行う上でとても役立ちます。

毎日、朝起きてすぐと、夜寝る前に、同じ時間に測定するようにしましょう。

排尿後、1~2分安静にしてから測定してください。椅子に深く腰掛け、背筋を伸ばし、リラックスした状態で測定することが大切です。カフ(腕に巻く帯)は心臓と同じ高さに位置させ、衣類の上からではなく、直接腕に巻きましょう。測定中は、話したり、体を動かしたりしないようにしてください。

また、1回の測定値だけで判断せず、数日間続けて測定し、平均値を参考にしましょう。

血圧変動のリスクと対処法

血圧は常に一定ではなく、活動や精神状態、時間帯などによって変動します。しかし、この変動が大きい場合は、血管に大きな負担がかかり、脳卒中の再発リスクを高める可能性があります。

血圧の変動を抑えるためには、規則正しい生活習慣を心がけることが重要です。

バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠、禁煙など、生活習慣の改善は血圧のコントロールにも繋がります。

また、ストレスをうまく管理することも大切です。もし、血圧の変動が大きい場合は、医師に相談し、適切な対処法についてアドバイスを受けてください。

松本美衣
松本美衣

薬の中断が招いた再発
初回の脳梗塞から回復した60代男性が「調子が良いから薬はもういらない」と自己判断で抗血小板薬を中断し、6ヶ月後に再発して入院しました。今度は前回より重篤で、右半身の完全麻痺となってしまいました。患者さんは「薬を続けていれば良かった」と深く後悔されていました。
再発予防の薬は「保険」のようなもので、症状がなくても血管を守り続ける大切な役割があります。
この経験から、薬の重要性を患者さんに理解してもらうため、血管の模型を使った説明や、薬を飲み忘れない工夫を一緒に考えるようにしています。

脳卒中再発予防のための生活習慣改善6選

脳卒中は再発しやすい病気です。一度脳卒中を発症すると、再発のリスクは数倍にも高まります。「もう二度とあんな思いはしたくない」「家族に心配をかけたくない」その強い思いは、医療者として私も深く共感します。脳卒中の再発を予防するために、今日からできる生活習慣の改善を一緒に考えていきましょう。

脳卒中再発予防のための生活習慣改善6選
脳卒中再発予防のための生活習慣改善6選

塩分を控えたバランスの良い食事

塩分の摂りすぎは高血圧を招き、動脈硬化を促進します。動脈硬化は血管を硬くもろくし、脳卒中の大きなリスク因子となります。

厚生労働省が推奨する1日の塩分摂取量の目標値は、男性7.5g未満、女性6.5g未満です。脳卒中の再発予防には、さらに目標を低く設定し6g未満を目指すことが推奨されています。

減塩を意識する上で重要なのは、調味料だけでなく、加工食品や外食にも多くの塩分が隠れていることを認識することです。例えば、ハムやソーセージ、インスタントラーメン、漬物などは、塩分が多く含まれています。外食の際は、スープやタレを残す、麺類の汁を全部飲まないなど、工夫してみましょう。

バランスの良い食事を心がけることも大切です。

  • 野菜
  • 果物
  • 海藻
  • きのこ
  • 大豆製品

などを積極的に摂りましょう。これらの食品には、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルが豊富に含まれており、血圧を下げる効果が期待できます。

例えば、カリウムは体内の余分なナトリウム(塩分)を排出する働きがあります。果物ではバナナやメロン、野菜ではほうれん草や小松菜がカリウムを多く含んでいます。

適度な運動で血圧をコントロール

適度な運動は、血圧をコントロールし、血管の健康を維持するために重要です。

ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなどの有酸素運動は、心肺機能を高め、血圧を下げる効果があります。研究によると、運動によって心臓のポンプ機能が向上し、一度に送り出す血液量が増えるため、心拍数が減少します。また、血管を拡張させる物質が分泌されるため、末梢血管抵抗が低下し、血圧が下がるのです。

週に3回以上、1回30分程度の運動を継続的に行うことが理想的です。運動の強度は、「ややきつい」と感じる程度が適切です。高齢者や持病のある方は、主治医と相談しながら、無理のない範囲で運動を始めましょう。

禁煙で血管の健康を維持

タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、血圧を上昇させる作用があります。また、一酸化炭素は血液中の酸素を減少させ、血管内皮を傷害します。これらの作用により、動脈硬化が促進され、脳卒中のリスクを高めます。禁煙は脳卒中の再発予防に非常に効果的です。禁煙外来などを利用し、医師や専門家のサポートを受けることで、禁煙成功率を高めることができます。

適正体重を維持

肥満は高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病のリスクを高め、脳卒中の再発リスクにもつながります。

BMI(体格指数)は、体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)

で計算できます。BMIが25以上は肥満、18.5未満は低体重とされています。高齢者の場合は、BMI22~25未満を目安にしましょう。

適正体重を維持するために、バランスの良い食事と適度な運動を心がけることが重要です。

睡眠不足を解消し生活リズムを整える

睡眠不足は、自律神経のバランスを崩し、血圧を上昇させる可能性があります。交感神経が優位になり、血管が収縮することで血圧が上昇しやすくなります。

また、睡眠不足はホルモンバランスにも影響を与え、食欲を増進させるホルモンの分泌を促し、肥満につながる可能性も示唆されています。

規則正しい生活リズムを維持し、質の良い睡眠を十分に確保するようにしましょう。

ストレスを上手に管理する

ストレスは交感神経を刺激し、血管を収縮させ、血圧を上昇させる原因となります。

また、ストレスは生活習慣の乱れにもつながりやすく、過食や睡眠不足、運動不足などを引き起こし、結果的に脳卒中の再発リスクを高める可能性があります。趣味やリラックスできる活動など、自分なりのストレス解消法を見つけることが大切です。

脳卒中の再発予防には、ご紹介した6つの生活習慣改善策を総合的に実践することが重要です。小さなことからでも構いません。できることから一つずつ始め、継続していくことで、再発リスクを減らし、健康寿命を延ばすことに繋がります。

まとめ

脳卒中 再発予防

脳卒中の再発予防には、血圧管理が鍵となります。

高血圧は血管に負担をかけ、脳卒中再発の大きなリスク因子です。目標とする血圧値は年齢や持病によって異なりますので、医師に相談し、適切な値を設定しましょう。かかりつけの病院での定期的な健診でのチェックも必要です。

家庭血圧測定を習慣化し、日々の血圧変動を把握することも大切です。

バランスの良い食事、適度な運動、禁煙、適正体重の維持、十分な睡眠、ストレス管理など、ご紹介した生活習慣の改善は、血圧コントロールだけでなく、あなたの健康寿命を延ばし、より豊かな生活を送るためにも繋がります。

できることから一つずつ、今日から始めてみませんか?

参考文献

  1. Hsu CY, Saver JL, Ovbiagele B, Wu YL, Cheng CY, Lee M. “Association Between Magnitude of Differential Blood Pressure Reduction and Secondary Stroke Prevention: A Meta-analysis and Meta-Regression.” JAMA neurology 80, no. 5 (2023): 506-515.
  2. Yoshimura S. “Medical Management of Acute Stroke based on Japan Stroke Society Guidelines and the Japan Stroke Data Bank.” Journal of atherosclerosis and thrombosis 31, no. 12 (2024): 1652-1659.
  3. Van Ochten NA, Suckow E, Forbes L, Cornwell WK. “The structural and functional aspects of exercise-induced cardiac remodeling and the impact of exercise on cardiovascular outcomes.” Annals of medicine 57, no. 1 (2025): 2499959.
  4. Qanitha A, Alkatiri AH, Qalby N, Soraya GV, Alatsari MA, Larassaphira NP, Hanifah R, Kabo P, Amir M. “Determinants of stroke following percutaneous coronary intervention in patients with acute coronary syndrome: a systematic review and meta-analysis.” Annals of medicine 57, no. 1 (2025): 2506481.
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